コラム

C-ROW代表の坂本が、業務に関係なく思いのままにコラムとして綴ります。

2015年6月29日 コラム一覧に戻る

本の旅

このところたくさん本を読むことができないのが、悩みです。ただ、積読であった本を読み始めたところ、いずれも良書。積読の本は以前お知り合いの方が面白いとおすすめしていたものばかりなので、いまさらながら感謝の限りです。
ここで面白かった本を少しご紹介します。
▼「セラピスト」 最相葉月著 新潮社
セラピストというと何だかうさんくささを感じますが、最相葉月が実際に臨床心理学の専門教育を受けた後、巨匠となる心理学者を訪ね、箱庭療法や絵画療法を受け、その歴史をひもといています。後半は、最近の臨床心理の流れなども書かれており、日頃何だかんだと心理学は身近にありつつも、なかなか真っ向から調べる機会がないので、そういった点でも非常に面白かったです。
著者の最相葉月氏は、私がたしか学生の時分、たまたま雑誌に載っていたコラムを読んで面白いと感じ、立て続けに読みました。最相葉月氏といえば、「絶対音感」が非常に有名で、一時期「絶対音感」がブームのようになっていましたが、著作を読むとむしろ音楽家にとって「絶対音感」が不可欠ではないという話だったように書かれていたので、逆に腑に落ちたことが印象に残っています。その後、「青いバラ」や星新一にまつわる評伝など読んできましたが、著者自身も一時期著作が途絶え、私自身も本を手に取る機会もなかったなかで、再びこの本と出会いました。
まさに出会って良かったなと感じた一冊です。
▼「バリアフリー・コンフリクト 争われる身体と共生のゆくえ」中邑賢龍・福島智編 東京大学出版会
バリアフリーやユニバーサルデザインの仕事を長らくお手伝いしたり、昨年度はちょうど障害福祉計画策定のお手伝いをしたこともあり、非常に興味深い内容でした。(購入したのはもっと前でしたが)
「バリアフリー・コンフリクト」という著作のタイトルがまず秀逸です。
たしかにバリアフリーといっても、障がいの違いや立場の違いによって「コンフリクト(衝突)」が起きますし、そうした視点からさまざまな障害の問題点をひもといているのが、とても咀嚼しやすい構成になっています。
そのなかで印象的だったのが、昔は文字を書いたりすることが思うようにできなかったりすることで障害者手帳を支給されましたが、現在その障害がメールなどによって軽減されたり、一方で情報がたくさんあったりすることによって起きるさまざまな不具合や障害が起きてしまう。社会によって障害というものが変化するということ。また支援用具によって、逆に健常者の能力を超えてしまって良いのか、どこまで超えて良いかというコンフリクトなど。
いろいろ障害当事者の方から、お話を伺う機会がある方だったので、わかったようでいましたが、まだまだだなと感じもしました。

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